ディズニー映画『白雪姫』(1937)といえば、王子とのキス。ですがこのキスシーン、意外にも原作には一切ありません!ディズニーの完全オリジナルです。さらにいえば、原作では『グリム童話』第何版によって、その復活方法も違います。
当記事では、『白雪姫』のキスシーンを、原作『グリム童話』と比較し詳しく解説しています。その復活方法も一様ではないので、気になる方はどうぞ寄ってってください。
白雪姫のキスシーン
『白雪姫』のキスシーン、今日ではディズニーを代表する名場面の1つです。
魔女が毒リンゴを作った当初、「恋人との初めてのキスで生き返る」と知りながらも、どうせ生きたまま埋めるだろうと意に介しませんでした。
ですが、白雪姫は、思いを寄せる王子のキスによって見事、息を吹き返します。この時、魔女は既にこの世から去っていますが、王子とのキスは魔女にとってまさに計算外だったでしょう。
復活させたのは王子ではなかった!?
確かに原作にあたるグリム童話の『白雪姫』においても、白雪姫が毒リンゴを食べた後、王子がやってきます。ですが、肝心のキスシーンはなく、そもそも王子が白雪姫を助けたわけではありません。
グリム童話は、初版から第7版まで出版されており、その都度物語にも修正が加えられています。それは『白雪姫』も例外でなく、初版と比べところどころで細かな違いは見受けられます。ですが、いずれにも王子のキスによって白雪姫が目覚めるといった描写は一切ありません。
つまり、キスシーンはディズニーの完全オリジナルです。
ディズニーを代表する一場面といっても過言ではないだけに、原作にも当然あると思われがちですが、実は後付けだったのです。
原作での白雪姫の復活方法
原作には、王子とのキスシーンがないからといって、白雪姫が毒リンゴを食べて倒れなかったわけではありません。実はキスとはまた違った方法で、白雪姫は復活しています。
さらにいえば、グリム童話は、初版から第7版が出版されていますか、それぞれでその復活方法にも違いがあります。
草稿版で助けたのは父親!?
実はグリム童話には、初版よりさらに前、エーレンベルク稿と呼ばれる草稿版が存在します。
そしてなんと、エーレンベルク稿では、白雪姫は父親(王様)によって助けられます。さらにいえば、父親と同行した医者が白雪姫の救助にあたっています。
ただ具体的な復活の方法は明示されておらず、「部屋の隅に縄をはった」ただそれだけしか記載されていません。一説によると何かの呪術で助けたとのこと。
白雪姫の父親が出るという点でも、非常に興味深い話です。
初版は召し使いの鉄拳によって復活!?
初版では、小人から承諾を得た王子が、召し使いに頼んで白雪姫を棺ごと城へと持って帰ります。そしてその後も、白雪姫から片時も離れたくなかった王子は、出かけるたびに召し使いに頼んで白雪姫を運ばせます。
ですが、何度も何度も重い棺を担がせる召し使いは、我慢の限界に。棺を運んでいる途中、白雪姫を棺から出して高く持ち上げ、そのまま背中をどん!と殴ります。
その瞬間、白雪姫が飲み込んでいた毒リンゴの芯が喉から飛び出し、無事生還となります。
召し使いの怒りの鉄拳が、白雪姫を復活させたというわけです。
完訳グリム童話集(全5冊セット) (岩波文庫) [ ヤーコプ・グリム ]
第2版以降は召し使いのドジで復活
第2版以降だと小人から承諾を得て、白雪姫の棺を召し使いに頼んで城に運んでいくまでは初版と同じです。違いは棺を運んでいる最中で、召し使いのドジによって白雪姫は復活しています。
運んでいる最中、召し使いの1人は木につまずいて転んでしまいます。と同時に棺の中が揺れ、白雪姫の毒リンゴが喉から飛び出て無事復活となっています。
まとめ
キスシーンがディズニーのオリジナルなのは、流石ディズニーといったところ。今では、白雪姫=王子のキスが完全に成り立っています。それほど印象に残るシーンです。グリム童話の復活方法は現実的すぎて、商業的には売れないでしょう。
ちなみに王子様が死体愛好家などという情報が出回っていますが、完全なデマです。少なくとも原作にはそのような記述は一切ありません。
0件のコメント